吉葦有梨 よのなかのこといろいろ

よしとあし、ありとなし

第百七十四話 水無月晦日

そういえば昨日は夏越の祓えだった。まぁ新暦だけど。
 ウィキペディア:大祓
友だちが「先週神社の前を通ったら丸い輪っかがあったけどなんだろう」ってブログに書いていた。
知識だけはあるもので、「それは茅の輪」って教えてあげたら、
神田明神に行って来てくぐったんだそうだ。


私はそんなことはすっかり忘れてた。
朝、長女を最寄りの駅まで送って、そのあと、チガヤと戦っていた。
茅の輪の材料になるチガヤである。


芝生の代わりにクリーピングタイムを植えているが、
先週植木屋さんがそれを刈ってしまったのだ。
割と雑な仕事なので根こそぎとまでは行かなかったが、
 アプリコット色の夏中咲いてくれるヘメロカリスも根元からざっくり…。
ゲチョロケになった。このまま地面を出しておいたら雑草の天下だよ。
荒れ果てた庭ではあるが、クリーピングタイムは5月頃ピンクのじゅうたんになる、
今のところこれだけが私の自慢なのに…。


なので、毎朝10分草抜きすることにした。
でも、アリが種を運んできたらしいチガヤは根が深いので、
10分草引きではムリなのである。


なので、昨日は降り出す前の午前と雨の合間の午後30分ずつくらいやった。
上に乗ってるタイムの根っこをほとんど掘り返すような形になったが、
1m四方位出来たかと。庭の向こう側にもチガヤが生えているので、
まだまだだが、とりあえず玄関に近い方は一仕事済んだ。


こんなに生命力の強い雑草だからこそ、
昔の人はその力を分けてもらおうと思ったんだろうなぁ。
ウィキペディアによると「世界最強の雑草」だそうである。
五月に出る白い穂は美しいのだが。


今週から結構降り続くらしい、
今も雨脚が強くなった音が聞こえる。
傘さして、10分やろう、
それから、「なにわなんでも大阪検定」行って来ます。
一級は通る気がしないです。

第百七十三話 ムーンリバー

ホテルの星観測ツアーに申し込んだ。
「本日も明日もキャンセル待ちになります」と言われ諦めていたが、
昼過ぎ、空きが出たとのこと。
7時からの夕飯も早めにしてもらって、ウキウキと星観測に備える。
が、食べているうちに雲がわいて出てそれまで雲一つなかった空がほとんど曇り空に。


足取りも重く集合場所へむかう私たち一家。
かなりたくさん人が集まっている。
案内人のおじさんは「星一徹」を名乗ったがそれで笑うのは50代以上では…。
「雲が出ていますが、流れが早いので、全然見えないことはないです。
見えているところから解説して行きます」本当かなぁ、本当ならいいけど…。


浜辺へ向かう途中、ヤドカリの大群に出くわす。「ここだけヤドカリ観察ツアー」だそうだ。
まだ目が慣れていないので、大変。よく見えないので、貝とおぼしきものを拾ってみる。
白い巻き貝を裏返すと確かにヤドカリがもがいている。後ろの男の子に手渡してあげた。
もっと大きなサザエくらいのヤドカリもいたらしいがそれはわからなかった。


浜辺で用意されていたデッキチェアに寝そべると
おぉ!雲の晴れ間にはめ込んだようにさそり座が!
ここは石垣島、さそり座が空高い!


そのさそり座も雲から出たり入ったり、
さそり座、射手座、夏の大三角形おとめ座のスピカ、
隣に地味に光る土星、これは天体望遠鏡で輪を見せて貰う。
今は輪が楕円型にしっかりと見え、
小さいけれどイメージ通りの土星、夫も次女も感動している。


そうこうするうち、南の空が晴れ渡り、天の川が見える。
最初は雲なのか天の川なのかわからないくらいだったが、
目が慣れると射手座から織り姫彦星の間を隔てる白鳥座へとしっかりとたどることができる。
双眼鏡が廻ってくる。無数の星がまたたいている。


「もうすぐ月が上ったら天の川は見えなくなっちゃいます」
見ると東の空が半円型に明るい。満月から二晩経った立待ち月。
時間を惜しみ、てんびん座(初めて見た!)、
やぎ座(これはよくわからなかった)、
矢座(大好きな星座、本当にうっすら)、
北斗七星と北極星(あまりに低い位置にあるので見間違いしていた)、
人工衛星に飛行機、流れ星(私は三度見逃す)を教えてもらい、
講義はなかったけれど素晴らしく大きなへびつかい座を楽しむ。


「あぁ、月が上って来ました」不気味に赤い月の上半分が見えた。
見る間に下半分も姿を現し、確かに明るい。
闇に慣れた目には周りの人の顔までわかるくらい、これなら明かりがなくとも歩ける、
そのかわり見える星の数はぐっと減ってしまう。
でも幸いなことに水平線近くには雲があり月を隠してくれてる。
隠れると暗くなる。歌舞伎でよく見たシーンだ。
出たり入ったり、この雲には随分と助けられた。


お開き後、希望者は星を背景に記念撮影となる。
順番を待っていると月が雲から出る。海に月が映って水平線からラインが続く。
これがムーンリバーだ。


ムーンリバーは1マイルより幅広い」中学の音楽の教科書に英語歌詞が載っていた。
ムーンリバーってどこにあるんですか?」
「なんで1マイルより幅広いんですか?」
ハックルベリーフレンドってトム・ソーヤの友達と関係あるんですか?」
英語の先生に質問してみたが、どうも先生もわかんないだってことがわかっただけ。


ハックルベリーはどうやらトムの幼なじみでよいようだが、
ずっとムーンリバーへの疑問は頭のすみっこに残っていた。
それが数年前ホセ・カレーラスの「ムーンリバー」を聞いていると突然閃いたんである。
そういえばその教科書には満月と水平線から続く光の筋が描かれていたっけ、なーんだ。


記念撮影はカメラのシャッターを10秒解放、
こちらの姿は小さなペンライトで照らしているだけ。
じっとしていたつもりだったけど夫と私の顔はぶれてるみたい。
背景の星空はさそり座に射手座、天の川、
小さなモニターでもその素晴らしさはわかる。データで送ってもらうことになっている。
とても楽しみだ。


帰り道、北斗七星の方に白い光が花火の最後のきらめきのように消えていった。
あまりに明るかったので流れ星と思わなかったくらい。
流れ星というよりは火球というやつ、きっと隕石として地球のどこかにたどり着いてる。


高校2年の次女は誕生日前日17歳、18歳未満の小人料金だった。
解散時、お子様だけに星をかたどったテープ細工をいただく。本来草で作ったものだそうだ。
12本の角が出ていて対角の角ではさみ、吹いてやるとクルクルまわる。
今宵は次女にはいろいろといいプレゼントとなった。
どうもありがとうございました。とても楽しかったです。


南の島の星空ツアー|石垣島スターガイド
http://www.ishigaki-starclub.com/

第百七十二話目 まんさくの花

今朝、天皇皇后両陛下が福島の避難所を訪問された
というニュースを見ていた。


被災地の4,5歳の少女は感想を聞かれ
「あのね、とてもきれいなひとだった」
それでどうしたの?
「バイバイっててをふってくれたの」
それでどうおもったの?「とてもうれしかった(*^-^*)」

う〜ん、すごいな、
なんの先入観もない無邪気な幼女をも
感動させるオーラあるんだろうなぁ。


深窓の令嬢がいきなり
日本国中の好奇と羨望と嫉妬のまなざしにさらされて、
それでも逃げずにときには重病になったり声が出なくなったり、
苦しみながらも50年あまり天皇と手を携えつつ心を国民に沿わせて。


美智子皇后のお歌は毎年歌会始の時楽しみにしてる。
難しい古語が美しい調べで並ぶ
言葉のゴブラン織りみたいな和歌だと思う。
現代日本を代表する歌人の一人だ。


それが、おととしだったかな
水泳の北島康介選手がオリンピックのインタビューで
漏らした言葉が使われていてちょっとおもしろかった。

たはやすく勝利の言葉いでずして
     「なんもいへぬ」と言ふを肯(うべな)ふ


その辺からちょっと新しい境地なのか
今年のお歌は言葉も易しい。
なんかとても好きだった。

おほかたの枯葉は枝に残りつつ
     今日まんさくの花ひとつ咲く


まんさくの木は落葉樹なんだけど、
シナマンサクは枯れた葉っぱが残ってついてる。
その一輪がまだ冬の空に鮮やかな黄色い花を咲かせた。
春を待つ心を歌った歌。


先日の宮城ご訪問の時、
家を津波で流されたと言う婦人が、
「元の場所に行ってみたら、植えてあった水仙は流されず
 咲いていたので、うれしくて摘んできました」
と黄色いラッパズイセンを見せた。
それを請うて大事に抱えてお帰りになったそうだ。


私もゴールデンウィークに青森西部と秋田に行ってきたが、
田んぼの土手やら庭先、黄色いラッパズイセンが咲き誇っていた。
ラッパ水仙は花びらが白くカップがオレンジのものも多いが、
それはほとんどなく、全部黄色いかカップがオレンジかどちらか。
冬の長い地域であの黄色い色はホントに元気をくれるのだろう。


だから、マンサクは東北で特に愛された花なのだった。
なんだか今の状態を予言し励ますようなお歌であり、
その意味でも日本を象徴する位にふさわしいと思う。


まぁ、葉っぱが残るのは
普通のマンサクでなくシナマンサクなんだけれども。


マンサク科の花の写真

第百七十一話目 注連飾り

ここ数年で鼻先に注連飾りをつけている車が減ってしまった。
毎年どんどん恥ずかしいような気が大きくなって、
今年は、注連飾り小というのをやめて、
輪型の交通安全用に換えたのを機会として、
鼻先につけるのはやめて、室内につけてみた。


そう思ってみると近所の注連飾りも減っている。
あってもリース風ってところも多い。


大阪の下町に住んでいた頃は
正月になると農村地帯から注連飾りを売りに来ていた。
小学生の子どもたちもお手伝いして大活躍。
農閑期に自分たちのうちの分作った後、内職分を作るんだろうなぁ。
あの子供たちは今どうしてるのかな。
農業を大切にしない国はいけないよね。

第百七十話目 椿、海を渡る

この間発売になった『家庭画報』2011年2月号の
カメリア(西洋椿)の特集にうちの父が提供した椿が2ページと
父の文章10行くらい載った。


うちの父は今を去ること40年くらい前に「椿」に取りつかれ、
江戸時代に流行した多彩な花、欧米へ渡って改良された華麗な花と
コレクションし、交配して新品種を作り、
江戸時代の文献やら、19世紀ヨーロッパの本やらも集めて、
データ整理して(20年ほど前は一晩かかってプリントアウトしてました)、
自分でヨーロッパの本の復刊して売ってます。
 すごく高いですが、これでっかいんです、A2くらい?ちゃんと売れてるらしいよ
その結果を集めて、ホームページも作ってます。


家庭画報』には椿の歴史みたいなの10行ぐらい書いてたが、相変わらず文章が硬いねぇ。


西洋椿ってのは、
鎖国中にもヨーロッパへ渡ったヤブツバキCamellia japonicaやら
 ヨーロッパ人に受けたのは一重のものより八重、千重、斑入り
など派手で大輪のもの
中国のトウツバキCamellia reticulataやらが
 これはもっと大輪で花弁が長くよれている
交配され発展していったもの。


ヨーロッパは氷河期に植物が減ってしまい、
常緑の広葉樹ってのがひいらぎとやどりぎくらいしかない。
 だから、クリスマスはこの二つの植物とモミの木なわけです。
 地中海だとオリーブとか月桂樹とかもうちょっとありますが。
だから、椿というのは、緑のつやつやとした葉っぱにバラのような花が
おまけに冬に咲くって夢のような植物だったわけだ。


北ヨーロッパでも地植えは大丈夫なのだが、
初めはおっかなびっくりで温室で育てていたそうである。


毎晩、髪に椿の花(八重咲きの大輪)を飾った椿姫は
ものすごくゴージャスでエキゾチックなことしてたのです。


だからねぇ、『ポーの一族』の「エヴァンズの遺書」
は時代的にはいけてるし、
バラのような花だけど香りのないところうまく生かして感心するんだけど
19世紀初頭イギリスで、
あれだけ地植えの大きな木がいっぱいある庭ってのは
残念ながらあり得ないです。


香り高い赤いバラと香りのない白い椿
すばらしいイメージの広がりなんですけどね。

第百六十九話目 明けの明星

年末なので、長女はユニクロにこき使われている。
なんでまた初発バスが出る前、
夜明け前に駅まで送って行く。

朝六時ごろ。この間はまだ、帰りには朝焼けが見られたけれど、
今日はもう真っ暗。

南の空、南中した下弦の月
その左側に明るい星!
これだけ明るい星は金星以外にないが、
こんなに高いところまで上がるんだ〜。
宵の明星では見たことがあるけれども。

ひょっとすると明けの明星は見たの初めてかも。

早起きは三文の得と言いますが、
そういう機会をくれた長女に感謝。