吉葦有梨 よのなかのこといろいろ

よしとあし、ありとなし

第百七十話目 椿、海を渡る

この間発売になった『家庭画報』2011年2月号の
カメリア(西洋椿)の特集にうちの父が提供した椿が2ページと
父の文章10行くらい載った。


うちの父は今を去ること40年くらい前に「椿」に取りつかれ、
江戸時代に流行した多彩な花、欧米へ渡って改良された華麗な花と
コレクションし、交配して新品種を作り、
江戸時代の文献やら、19世紀ヨーロッパの本やらも集めて、
データ整理して(20年ほど前は一晩かかってプリントアウトしてました)、
自分でヨーロッパの本の復刊して売ってます。
 すごく高いですが、これでっかいんです、A2くらい?ちゃんと売れてるらしいよ
その結果を集めて、ホームページも作ってます。


家庭画報』には椿の歴史みたいなの10行ぐらい書いてたが、相変わらず文章が硬いねぇ。


西洋椿ってのは、
鎖国中にもヨーロッパへ渡ったヤブツバキCamellia japonicaやら
 ヨーロッパ人に受けたのは一重のものより八重、千重、斑入り
など派手で大輪のもの
中国のトウツバキCamellia reticulataやらが
 これはもっと大輪で花弁が長くよれている
交配され発展していったもの。


ヨーロッパは氷河期に植物が減ってしまい、
常緑の広葉樹ってのがひいらぎとやどりぎくらいしかない。
 だから、クリスマスはこの二つの植物とモミの木なわけです。
 地中海だとオリーブとか月桂樹とかもうちょっとありますが。
だから、椿というのは、緑のつやつやとした葉っぱにバラのような花が
おまけに冬に咲くって夢のような植物だったわけだ。


北ヨーロッパでも地植えは大丈夫なのだが、
初めはおっかなびっくりで温室で育てていたそうである。


毎晩、髪に椿の花(八重咲きの大輪)を飾った椿姫は
ものすごくゴージャスでエキゾチックなことしてたのです。


だからねぇ、『ポーの一族』の「エヴァンズの遺書」
は時代的にはいけてるし、
バラのような花だけど香りのないところうまく生かして感心するんだけど
19世紀初頭イギリスで、
あれだけ地植えの大きな木がいっぱいある庭ってのは
残念ながらあり得ないです。


香り高い赤いバラと香りのない白い椿
すばらしいイメージの広がりなんですけどね。