吉葦有梨 よのなかのこといろいろ

よしとあし、ありとなし

第百七十二話目 まんさくの花

今朝、天皇皇后両陛下が福島の避難所を訪問された
というニュースを見ていた。


被災地の4,5歳の少女は感想を聞かれ
「あのね、とてもきれいなひとだった」
それでどうしたの?
「バイバイっててをふってくれたの」
それでどうおもったの?「とてもうれしかった(*^-^*)」

う〜ん、すごいな、
なんの先入観もない無邪気な幼女をも
感動させるオーラあるんだろうなぁ。


深窓の令嬢がいきなり
日本国中の好奇と羨望と嫉妬のまなざしにさらされて、
それでも逃げずにときには重病になったり声が出なくなったり、
苦しみながらも50年あまり天皇と手を携えつつ心を国民に沿わせて。


美智子皇后のお歌は毎年歌会始の時楽しみにしてる。
難しい古語が美しい調べで並ぶ
言葉のゴブラン織りみたいな和歌だと思う。
現代日本を代表する歌人の一人だ。


それが、おととしだったかな
水泳の北島康介選手がオリンピックのインタビューで
漏らした言葉が使われていてちょっとおもしろかった。

たはやすく勝利の言葉いでずして
     「なんもいへぬ」と言ふを肯(うべな)ふ


その辺からちょっと新しい境地なのか
今年のお歌は言葉も易しい。
なんかとても好きだった。

おほかたの枯葉は枝に残りつつ
     今日まんさくの花ひとつ咲く


まんさくの木は落葉樹なんだけど、
シナマンサクは枯れた葉っぱが残ってついてる。
その一輪がまだ冬の空に鮮やかな黄色い花を咲かせた。
春を待つ心を歌った歌。


先日の宮城ご訪問の時、
家を津波で流されたと言う婦人が、
「元の場所に行ってみたら、植えてあった水仙は流されず
 咲いていたので、うれしくて摘んできました」
と黄色いラッパズイセンを見せた。
それを請うて大事に抱えてお帰りになったそうだ。


私もゴールデンウィークに青森西部と秋田に行ってきたが、
田んぼの土手やら庭先、黄色いラッパズイセンが咲き誇っていた。
ラッパ水仙は花びらが白くカップがオレンジのものも多いが、
それはほとんどなく、全部黄色いかカップがオレンジかどちらか。
冬の長い地域であの黄色い色はホントに元気をくれるのだろう。


だから、マンサクは東北で特に愛された花なのだった。
なんだか今の状態を予言し励ますようなお歌であり、
その意味でも日本を象徴する位にふさわしいと思う。


まぁ、葉っぱが残るのは
普通のマンサクでなくシナマンサクなんだけれども。


マンサク科の花の写真