吉葦有梨 よのなかのこといろいろ

よしとあし、ありとなし

八十日目 『恋飛脚大和往来』

昨日に引き続いて、『歌舞伎役者 片岡仁左衛門』を見に行く。
こっちは孝夫さん主役の『沼津』と『梅川忠兵衛』があって、
全然眠くならない・・・、とても現金なワタシ。
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仁左衛門一家のインタビュー中も
上方歌舞伎の将来を憂う孝夫さんの顔アップが続く。
これもムリなかろうと思われるビボーであった。
ちっとも老けておられないと思っていたが、
20数年前の孝夫さん、綺麗だった〜。
 それとやっぱし、夫はちょっと孝夫さんに似てると思った(^_^ゞ←二人くらいには言ってもらったことある、お世辞はあるとして。
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それはさておき、
『沼津』も『梅忠』の『新口村(にのくちむら)』は泣きますな。
十三代仁左衛門演ずる主人公の老父が
正直一途で愛情深く不器用な性格が迫ってきて。
 上のリンクの『孫右衛門の巻』の写真は孫右衛門じゃない〜。
『孫右衛門の巻』は三日間の最終上映だったのもあり、
『新口村』幕切れ、「大松島っ!」と大向こうがかかり、
みんな力一杯拍手した。映画の終わりも拍手した。
mixiのコミュの人たちが手弁当で作り上げた上映会だ。
本当にありがとうございました。
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『梅忠』の『封印切』、
これは近松門左衛門の『冥土の飛脚』の書き換えである。
原作はこないだ文楽で聴いた。
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忠兵衛は家のお金をごまかすのに
ぽっと出の女中さんを色仕掛けでだますようなヤツだし、
八右衛門は忠兵衛の親友、
彼のために茶屋で彼のことをくさす、
とはいえ、こんなとこへ来てそこまで言うのは
なんか屈折したものがあるよねぇ、多少酔ってるんだし余計に
って感じのリアルな男、忠兵衛が来ているとは知らなかったんだけど。
梅川も八右衛門に対し必死で忠兵衛の弁護をして、よよと泣く
彼女がバタバタしなきゃ、忠兵衛も封印は切らなかっただろう。
 封印ってのは公金の封、切ったら使ってなくても死罪に決まってる。
 忠兵衛の家はこの為替のお金を預かってやりとりする飛脚屋。

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改作の『恋飛脚』は八右衛門を悪役にしているので、
忠兵衛も弱さはあるが梅川を愛するあまり短慮を起こした、
観客の共感を呼ぶ、同情すべき男になっている。
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で、八右衛門、これも当代仁左衛門がやると絶品なんだ〜。
イヤなヤツのはずなのだが、実に魅力的。
忠兵衛よりこいつの嫁になる方が幸せになれるかもしれない
って気もする、浮気はしそうだけど。
他の人の八右衛門より科白の緩急が絶妙なんだよね。
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八右衛門は忠兵衛を様々にののしるのだが、
随所に「大和の金はそんな音がするんかいっ?」などと
「大和」という言葉が出てくる。
忠兵衛は大和の新口村の出身で、大坂の飛脚屋に養子に来たので。
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今でも大阪から奈良を見たら田舎なのだ。
奈良市街の商店街って七時にはしまっちゃうし、
海がないので、こないだのchukiwikiでは
「・奈良県人は海を見ると興奮して『海や〜!』と叫ぶ。
  ・琵琶湖を見ても『海や〜!』叫ぶ。
   ・そのため琵琶湖は多少塩辛くなったらしい。」
と書いてあった。
長女も高校で「ジョジョちゃんは陸子(りくこ)だから」
と言われちゃっていた。
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今でもそうなんだから、忠兵衛には、
浪華っ子でないコンプレックスと背伸びもあったんだろう。
とまぁ、今は奈良県民、心はまだ大阪人の私は思うのである。
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