吉葦有梨 よのなかのこといろいろ

よしとあし、ありとなし

二十日目 合歓の花

合歓の花が咲いていた。
合歓には雨が似合う。
芭蕉も『奥の細道』で詠んでいる。
 象潟や雨に西施がねぶの花
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 西施(せいし)ってのは中国四大美人の一人だそうで、
 中国四大美人はこの人と楊貴妃は決まっていて、あとはバラバラみたいだ。
 父が中国土産にもらった磁器像は王昭君貂蝉だった。
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 王昭君匈奴に嫁にやられた悲劇の人。
 皇帝は後宮で一番不美人を匈奴の妻にやると肖像画を提出させたが、
 王昭君は自信があったので画家に賄賂を握らせなかったんだそうである。
 で、皇帝は彼女を選び、何もかも決まったあとで謁見して後悔したと。
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 貂蝉三国志ゲームで有名な人だが、この人だけ架空の人物だし、
 その当時から不審には思ってたので、他の説があると聞き納得。
 あとの二人は虞美人と卓文君(文学者との熱烈な恋愛譚で有名らしい)だが、
 卓文君は権力者の愛人でないじゃん、ちょっと格不足かと思う。
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 貂蝉は無茶無茶色っぽい人、楊貴妃はふくよかで、
 王昭君はお堅く、西施はあえかな美人だった。

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閑話休題ソノハナシハコッチヘオイトイテ:
なんで西施が「恨むがごとし」な象潟の景色に似合うかというと
彼女は「顰みに倣う」なる故事成語の元になったからである。
 胸の病を持った彼女はよく眉をひそませて歩いていた。
 その風情が誠に好ましいので評判となった。
 それをしこめが真似をして嗤われた。
ま、そういうことなので、男を骨抜きにして身を滅ぼさせたって
やってることは貂蝉とほぼ同じなのだが、イメージは随分違う訳なのだった。
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雨に打たれた合歓の花は繊細、
でも、そこだけ明かりがともったように目を引き、
確かに憂い顔の美女にたとえたい。
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同じように小さな島が点在する風景でありながら、
象潟は雄大で男性的な松島と対照的に女性的で繊細、ちょっと地味。
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というが、この象潟、200年前の地震で土地が隆起し、
田んぼの中に島が点在する場所になっちゃっている。
まさに桑海の変。
目を細めてみたら芭蕉が見た風景がわかって楽しかった。
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合歓の花の風景で一番印象的だったのは、
近鉄生駒線の元山上口(もとさんじょうぐち)駅のあたり。
ここは竜田川が十数メートルの深さで切り込み、ミニ大歩危小歩危
岩肌の上の緑の中のあちこちに
ぽっぽっと合歓の独特の花が浮かんでいる。
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その渓流のみなもを見ると合成洗剤の泡と家庭ゴミが
いっぱい浮いてるんだもんな。
百人一首にも歌われたあの竜田川なのに、
これを汚すあんたたちってなんだ?憤りを感じた。
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ネムノキの画像をリンクしておこうと
ウィキペディアに行ってみたら、
なんと、ネムノキはネムノキ科になっていた〜!
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マメ目だけどミモザ、ギンヨウアカシア、オジギソウなんかと
一緒にネムノキ科!まぁ確かに繊細な複葉、
マメ科に特徴的な蝶形花を取らず、
おしべばっかり目立ったポンポンかブラシみたいな花、
となると別の科を立てたくなるのもある。
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でも、さやを作った実は紛れもなくマメ科のもの。
蝶形花を取らないセンナなどもジャケツイバラ科になってるらしいけど、
ジャケツイバラ科ハナズオウはどう見ても蝶形花だよな〜、
複葉でないけど。これもマメのサヤの形の実がなる。
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分類学も分けるとその学者の名前が残る訳だから、
ど〜なんだかと思うこともしばしば。
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ウィキペディア:ネムノキ
マメ科の花・・・確かにネムノキは異端だ。
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ネムノキはフロンティア植物、河原や荒れ地に生えてくる。
今日見たネムノキも川の土手上に生えて、
堤の上まで顔を出していた。
隣の宅地にも生えていたっけ、
こちらに引っ越して一年は空き地だったので、ネムノキの花見が出来た。
売れたので引っこ抜かれてしまったが。 
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第二阪奈でも目立ったネムノキがあったのだけど、
今年は見あたらない。
フロンティアーの役目は終わったのかもしれない。