吉葦有梨 よのなかのこといろいろ

よしとあし、ありとなし

第百五十六話目 House of the Rising Sun

もうすぐ梅雨入り、この時期はいつも体調がよくない。
雨にも湿気にも蒸し蒸しにも負けない音楽はないかな〜と考えてみました。


The Brothers Fourの本屋で安く買ったベスト盤、これにしてみた。
アコースティックの音に西海岸の乾いた空気感がある。これでいいんじゃないのかな。


後で調べるとThe Brothers Fourは西海岸でもシアトル出身なので、
あの辺はアメリカ一晴れた日が少ないんじゃなかったっけか。
まぁ、乾燥した気候に憧れるってのが日本と共通するってことで。
英語版ウィキペディアの項にも
The British Invasion and the ascendance of edgier folk rock musicians such as Bob Dylan put an end to the Brothers Four's early period of success, but they kept performing and making records, doing particularly well in Japan and on the American hotel circuit.
とあったしね。


どの曲も好きなのだが、彼らの歌はなまじかなり聞き取れるので歌詞が気になる。
"House of the Rising Sun"は「朝日の当たる家」という明るい題名とは
うらはらに娼館の歌と聞いたが、なんて言ってんだろう?


歌詞を検索するとYouTubeでThe Animals歌唱歌詞入りが見つかった。

ん〜、あれえ?これじゃ、娼館じゃなくて刑務所じゃん。
でも、The Brothers Fourは"young girls"とか歌ってたしなぁ。
歌詞違うの?


検索してみました。
この人も同じことを言ってる。

The Animals The House of the Rising Sun


There is a house in New Orleans
They call the Rising Sun
And it's been the ruin of many a poor boy
And God I know I'm one
ニューオーリンズに昇陽館と呼ばれる家がある
哀れな男の行き着くところ、そう俺もその一人


My mother was a tailor
She sewed my new bluejeans
My father was a gamblin' man
Down in New Orleans
母さんは仕立屋、ジーンズを縫ってくれたっけ
父さんは博打打ち、ニューオーリンズの下町の


Now the only thing a gambler needs
Is a suitcase and trunk
And the only time he's satisfied
Is when he's on a drunk
博打打ちに必要なのはスーツケースとトランクだけ
博打打ちが満たされるのは飲んだくれている時だけ


Oh mother tell your children
Not to do what I have done
Spend your lives in sin and misery
In the House of the Rising Sun
世のお母さんがたよ、子どもたちに言ってやれ
俺みたいにはなるな、うちひしがれて昇陽館で暮らすなと


Well, I got one foot on the platform
The other foot on the train
I'm goin' back to New Orleans
To wear that ball and chain
片足はプラットホーム、もう片方は列車の中
ニューオーリンズへ戻るのさ、鎖付き鉄球をまとうため


There is a house in New Orleans
They call the Rising Sun
And it's been the ruin of many a poor boy
And God I know I'm one
ニューオーリンズに昇陽館と呼ばれる家がある
哀れな男の行き着くところ、そう俺もその一人

アメリカ民謡なんだって。どうも私は欧米の民謡が好きだなぁ。
そういわれてみれば、単調なメロディの繰り返し。
アニマルズのが一番有名だが、ボブ・ディランも歌ってると。
彼の歌詞では女が歌っている。
やはり上のサイトでの解説
.

ボブ・ディラン House of the Rising Sun


There is a house down in New Orleans
They call the Rising Sun,
And it's been the ruin of many poor girl
And me, oh, God, I'm one.
ニューオーリンズに昇陽館と呼ばれる館がある
哀れな女の行き着くところ、そうあたしもその一人


My mother was a tailor,
She sewed these new blue jeans.
My sweetheart was a gambler, Lord,
Down in New Orleans.
母さんは仕立屋、ジーンズを縫ってたっけ
いとしい彼は博打打ち、ニューオーリンズの下町の


Now the only thing a gambler needs
Is a suitcase and a trunk;
And the only time when he's satisfied
Is when he's on a drunk.
博打打ちに必要なのはスーツケースとトランクだけ
博打打ちが満たされるのは飲んだくれている時だけ


He fills his glasses up to the brim
And he'll pass the cards around,
And the only pleasure he gets out of life
Is rambling from town to town.
博打打ちは酒を注いではカードを配る
楽しみは町から町へさまようことだけ


Oh tell my baby sister
Not to do what I have done,
But shun that house in New Orleans
They call the Rising Sun.
妹に言ってやってよ、あたしのようになるなって
ニューオーリンズの昇陽館には近づくなって


Well, it's one foot on the platform
and the other foot on the train,
I'm going back to New Orleans
To wear that ball and chain.
片足はプラットホーム、もう片方は列車の中
ニューオーリンズに帰るところ、鎖付き鉄球をまとうため


I'm going back to New Orleans,
My race is almost run;
I'm going back to end my life
Down in the Rising Sun.
ニューオーリンズに戻ったらあたしの人生ももう終わり
「昇る陽」のもとで残りの人生を送るのさ


There is a house down in New Orleans
They call the Rising Sun,
And it's been the ruin of many poor girl
ニューオーリンズに「昇陽館」と呼ばれる館がある
哀れな女の行き着くところ


でも、The Brothers Fourのやつ、
娼館にMy Sweetheartがいると言ってて男バージョンみたいなんだけど。
他にもバージョンがあるという

ジョーン・バエズ House of the Rising Sun


There is a house in New Orleans
They call the Rising Sun.
It's been the ruin of many a poor girl,
And me, O God, for one.
ニューオーリンズに「昇陽館」と呼ばれる館がある
哀れな女の行き着くところ、そうあたしもその一人


If I had listened what Mamma said,
I'd 'a' been at home today.
Being so young and foolish, poor boy,
let a rambler lead me astray.
ママの言いつけ聞いてたら今もおうちにいたのにね
若くて馬鹿なあたし、男で人生あやまった


Go tell my baby sister
Never do like I have done
To shun that house in New Orleans
They call the Rising Sun.
妹に言ってやってよ、あたしのようになるなって
ニューオーリンズの昇陽館には近づくなって


My mother she's a tailor;
She sold those new blue jeans.
My sweetheart, he's a drunkard, Lord, Lord,
Drinks down in New Orleans.
母さんは仕立屋、ジーンズを売ってたっけ
いとしい彼は飲んだくれ、ニューオーリンズの下町の


The only thing a drunkard needs
Is a suitcase and a trunk.
The only time he's satisfied
Is when he's on a drunk.
飲んだくれに必要なのはスーツケースとトランクだけ
飲んだくれが満たされるのは酔いつぶれている時だけ


Fills his glasses to the brim,
Passes them around
Only pleasure he gets out of life
Is hoboin' from town to town.
飲んだくれは酒を注いではそれをふるまう
楽しみは町から町へさまようことだけ


One foot is on the platform
And the other one on the train.
I'm going back to New Orleans
To wear that ball and chain.
片足はプラットホーム、もう片方は列車の中
ニューオーリンズに戻るところ、鎖付き鉄球をまとうため


Going back to New Orleans,
My race is almost run.
Going back to spend the rest of my days
Beneath that Rising Sun.
ニューオーリンズに戻ったらあたしの人生ももう終わり
「昇る陽」のもとで残りの人生を送るのさ

これ悲しいなぁ、一番悲しいかも。
でも、解説にある「鎖付き鉄球」の節はThe Brothers Fourバージョンにはない。
必死で聞き取りしてみました。


The Brothers Four House of the Rising Sun


There is a house in New Orleans
They call the Rising Sun
But down for love so many young girls
My sweetheart she was one
ニューオーリンズに「昇陽館」と呼ばれる館がある
恋ゆえに身を落とした若い女たち、俺のあの子もその一人


Oh, I was young and foolish
I'd home I could not stay
But my sweetheart met with a gambling man
Who lead her hold astray
俺は若くてバカだった、家にじっと居つけなかった
俺のあの子は博打打ちに遭い道を誤ったんだ


When I was through with rumbling
Then whole I quickly run
Her mother cry "You find my girl
In the House of the Rising Sun"
俺はさまよい歩くのをやめて(?)
彼女の母親は叫んだ「あんたあの子を昇陽館でみつけたって」


And when I sang my sweetheart
It gave my heart such pain
She said to me in misery
"I can never go home again
俺はあの子のことを歌った、心に痛みを感じながら
あの子は俺にこう言った「二度とうちには帰れない


Yeah, go and tell my baby sister
Not to do what I have done
But spend your life as an honest man's wife
Turn your back on the Rising Sun"
妹に言ってやってよ、あたしのようになるなって
まじめな男に嫁入りな、『昇る陽』には背を向けて」


1-3 But* down* for love so many young girls
2-2I'd* home* I* could not stay
3-2Then whole* I* quickly run
3-3Her mother cry* "You find my girl
4-1 And when I sang* my sweetheart


このあたり自信がありません、文章になってないとこあるし、時制があわない。
2-4はもう直してあるけど、最初はWho lead her hold a straightと聞いて、
なんでギャンブラーが更正を勧めるんだろう?と不思議だった。
'astray'「道を誤らせる」でした。知らない単語は絶対聞き取れませんね。
3-2はお手上げです。


歌ってるのは男だけど、途中でその恋人の直接話法に。
この道を誤らせるギャンブラーって歌ってる男のことかなぁ、
ならば、男の懺悔にもなっているが、
彼女のお母ちゃんが出てきてがよくわからない。
彼女を引き取ることをお母ちゃんは拒否したんだろうな。
前の三つのバージョンにある鉄道がこれには出てこない。
もっと古いバージョンなのかも。娼婦と鉄球つき鎖があんまり結びつかないので、
ギャンブラーの果ての歌と道を誤った女の歌と合わさって、
アニマルズでまた離れたってとこかもかなぁ。


日本語訳は先日亡くなった浅川マキのが有名らしい。
またもやYouTubeで検索するとちあきなおみのが出てきた。
ただただすごい。


他の曲も聴いてみたけど、彼女のオリジナルは濃い曲が多いので、
カバーの方が親しみやすく、その実力がよくわかる。
演歌からフォークまで自分のものにして歌ってる。
声や歌い方も変わる。それも無理なく自由自在。
『氷の世界』とか『あばよ』とか。『あばよ』なんか中島みゆきの声になってる。
が、中島みゆきよりうまくってなおかつ
中島みゆきの言いたかったことを歌い尽くしていると思う。


ちあきなおみ『朝日楼』


歌だけでもすごいのだが、その表情!
最後の一節なんか、
この歌の娼婦の魂が降りてきてここで息づいて歌ってる。
それでいて、ただ運命に流された弱い女でなく、
この歌を後世に残した強さ、
この歌のおかげで道を踏み外さなかった少女もいたかもしれないし、
この歌を口ずさむことでその日を生き延びた娼婦もいたかもしれない、
我が身を捨てて衆生を救った観音様の化身かってな
神々しいまでの普遍性も感じさせる。



どうも販売されている音源はこのCDしかないようです。
The Brothers Fourの"House of the Rising Sun"はゆうつべ・熱帯雨林まわったけど見つからず。