吉葦有梨 よのなかのこといろいろ

よしとあし、ありとなし

五十一日目 本水

文楽行った。楽しかった。
第二部と第三部固めて見て、
午後二時半から八時過ぎだけど、
途中で一時間ウロウロ脚のばして
ゆっくり座ってコーヒー飲めたから、いつもより楽。
       *
 国立文楽劇場はロビーでしか飲食させないのに
 ロビーに人数分の椅子がないのだ。
 これだけで私は黒川紀章評価しないねぇ。
 なんで大阪庶民の文楽の劇場に
 京都の宮様趣味、洗練の極である、
 桂離宮「月」字の引き手が付いてんだよぉ。

       *
第二部は近松もの。『鑓の権三重帷子*1
近松の描く登場人物ってパターンじゃなくて、
人間そのものなんだよな。
娘を自分好みの男に嫁がせようとして、
自分の欲望と娘のためってのが訳わからなくなる
母親ってのあるある。うちの母もそうだったよ。
でも、パターンでなくそういう人間が息づいている。
そういう女に巻き込まれちゃった男はどうするんだ。
ちょっと性的に甘いところがあってそこに隙があった訳だが。
なんで、私は感情移入の場所がわかんなかった。
       *
第三部『国言詢音頭*2』は自分をだまして貢がせていた遊女をはじめとして
五人を斬り殺した侍の話。
シンプルだが鶴屋南北の『盟三五大切*3』と骨格は似ている。
一番の恨みの対象の間夫*4が助かっちゃうとこも
原作にあったんだ。
遊女も彼氏に対しては愛があるとこも。 
人形なので斬り殺す場面がこわいです。
胴切りとか首切りとかできちゃうんでね。
第一部はお子様用の『西遊記』だが、
これはR-18ですな。R-15かな?
       *
それで最後、侍が塀の外に出てきて見得を切る。
そこで舞台の上から水が落ちてきて、
人形は傘を開いて水をとばしながら幕が閉まる。
今月初めに見た宝塚歌劇の『雨に唄えば』でも、
こういう風に雨が降ってたな。
本水といえばやっぱり夏芝居なのですね。
ワタシ的には本水というと市川猿之助の芝居で
ドッシャ〜〜とタンク大爆発ほどの水が天井から降ってくる
ってのがスタンダードなので、
めちゃくちゃ涼しくはならないのだが、
それは贅沢だよね。

*1:やりのごんざかさねかたびら

*2:くにことばくどきおんど

*3:かみかけてさんごたいせつ

*4:まぶ:遊女の恋人